バイオプラスチックとは?
環境問題や資源不足の課題解決に不可欠な素材を紹介

バイオプラスチックとは?環境問題や資源不足の課題解決に不可欠な素材を紹介

プラスチックは、その特性上、製品や容器などの様々なものに利用されていますが、環境への影響や原料となる資源不足が懸念されています。

そこで、近年ではプラスチックが抱える問題を解決できる新しい素材として「バイオプラスチック」が注目されています。

本記事では、将来的に技術の発展が期待されているバイオプラスチックの概要や活用するメリット、課題などを紹介します。


▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


目次

  • バイオプラスチックとは環境に配慮したプラスチックのこと
  • バイオプラスチックを活用するメリット
  • 日本のバイオプラスチックの導入状況と普及に向けた課題
  • カーボンニュートラル実現にはバイオプラスチックの普及が必要不可欠
  • バイオマスビジネスを加速させるなら「BIOMASS EXPO バイオマス展」へ
  • バイオマス技術の最新情報を入手して環境に優しいビジネスを

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バイオプラスチックとは環境に配慮したプラスチックのこと

バイオプラスチックとは、環境に優しい「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の総称です。

一般的なプラスチックは石油から作られており、軽量で丈夫かつ加工しやすいため、製品や容器、包装などに幅広く活用されています。

素材として使いやすいプラスチックですが、自然界で分解されにくく廃棄段階で問題があるのみならず、製造の過程でCO2(二酸化炭素)を排出するため、環境に悪影響を与えることが大きな課題です。

そこで、バイオプラスチックへの移行により、プラスチックが抱える環境課題の解決に期待が寄せられています。

バイオマスプラスチックの特徴と種類

バイオマスプラスチックは、再生可能な有機資源由来の物質を原料に含み、化学的または生物学的に合成して得られるプラスチックです。

バイオマスプラスチックの生成方法には、糖や油脂などの植物原料から樹脂を化学合成する「化学合成法」と、トウモロコシやサトウキビなどの植物原料(糖や油脂など)を発酵させて樹脂を作成する「発酵法」があります。

バイオマスプラスチックの種類は様々ですが、大きく「バイオマスを全面的に使用しているもの」と「部分的に使用しているもの」に分けられます。

※バイオPAの種類は多岐にわたり、種類によってバイオマス度が異なります。

バイオマスプラスチックは、バイオマスの持つカーボンニュートラル性から、製造段階のみならず、焼却処分時に大気中のCO2の濃度を上昇させない特徴があり、地球温暖化の防止や化石資源への依存度低減に貢献することが期待されています。

生分解性プラスチックの特徴と種類

生分解性プラスチックは、通常のプラスチックと同様に使用でき、使用後は微生物の働きによって分子レベルまで分解され、最終的にはCO2と水になって自然界へと循環していく性質を持ったプラスチックです。

生分解性プラスチックの種類には、化石資源を原料とするものと、バイオマスを原料とするもの(バイオプラスチック)がある他に、バイオマスプラスチックと同様にバイオマス+化石資源由来のものもあります。

なお、日本で普及しているもののうち、7割程度がバイオマス由来のものです。
 

バイオプラスチックを活用するメリット

バイオプラスチックを活用する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 従来から対応が期待されているプラスチックの3Rが拡大できる
  • 化石燃料の依存度が低くなる
  • CO2(二酸化炭素)の抑制に繋がる
  • 海洋プラスチックの問題解決に繋がる

それぞれ解説します。
 

従来から対応が期待されているプラスチックの3Rが拡大できる

3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字を取った略称です。

ゴミの焼却時に排出されるCO2や運搬時に消費されるエネルギーは、地球温暖化の原因のひとつです。近年、世界中でサスティナブルな社会を目指す取り組みが行われているなか、ゴミの問題が世界的に課題となっています。

プラスチックは様々なものに使用されているため、プラスチックの3Rはゴミの問題と地球温暖化の解決に必要不可欠です。

その点、生分解性プラスチックを利用すると、廃棄時の焼却から堆肥化・ガス化への転換による循環が可能になる上、地球温暖化の解決手段のひとつとして生分解性プラスチックの活用が促進されています。

また、従来のプラスチックから生分解性プラスチックへの移行は、廃棄処理の手間やコストの削減にも繋がります。

化石燃料の依存度が低くなる

プラスチックの原料となる石油は化石資源のため、限りがあります。

日本は石油のほとんどを輸入に頼っており、将来的に石油が枯渇すると様々な面に支障を来すことが懸念されますが、バイオマスを原料とするプラスチックに変換すると、化石燃料への依存度を低減できます。

CO2(二酸化炭素)の抑制に繋がる

バイオマスプラスチックは、原料となる植物の光合成によってCO2を吸収します。

通常のプラスチックは生産の過程でCO2が排出されるため、地球温暖化に大きな影響を与えますが、バイオマスプラスチックであれば生産の過程で生じるCO2の量が光合成によって吸収したCO2と相殺されるといわれています。

そのため、CO2の抑制に繋がり、地球温暖化の防止に期待できます。

海洋プラスチックの問題解決に繋がる

プラスチックの問題として海洋プラスチックがあります。海洋プラスチックとは、プラスチックが海に拡散することで生態系に影響を与えることや、船舶航行への障害などの被害が想定される問題です。

また、近年は海洋中のマイクロプラスチック(5mm以下の微細なプラスチックゴミ)も問題になっています。

生分解性プラスチックは最終的にCO2と水に分解されるため、地球温暖化だけでなく、海洋プラスチックやマイクロプラスチックの問題解決に繋がることが期待されています。

日本のバイオプラスチックの導入状況と普及に向けた課題

年を追うごとにバイオプラスチックの生産能力は上昇している状況です。2018年時点で、世界のプラスチック製造量は年間360,000千トンとなっており、そのうちバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの割合は以下のとおりです※。

  • バイオマスプラスチック:約1,198千トン
  • 生分解性プラスチック:約912千トン

しかし、日本では年間約9,920千トンのプラスチックが投入されているうち、バイオプラスチックは45千トン(バイオマスプラスチック:約41千トン、生分解性プラスチック:約4千トン)です※。

2018年時点ではバイオプラスチックの導入率が0.5%に達していないため、世界的に見るとまだまだ普及は進んでいません。

バイオプラスチックを普及させるためには、様々な課題を解決する必要があります。以下では、バイオプラスチックの主な課題を4つ紹介します。

  • 生産コストの負担が大きい
  • 使用後のフローが確立されていない
  • バイオマスプラスチックは原料不足の懸念がある
  • 生分解性プラスチックは用途が限定される

※出典:環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ-持続可能なプラスチックの利用に向けて-」

課題①生産コストの負担が大きい

バイオプラスチックは環境に優しい反面、コストに関しては通常のプラスチックより高いといわれています。以下は、バイオプラスチックとプラスチックのコストを比較した一例です※。

※出典:環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ-持続可能なプラスチックの利用に向けて-」

バイオプラスチックを安定的に利用する場合、事業者、消費者の双方にとってコスト面で大きな負担になります。そのため、バイオプラスチックを普及させるには、如何にコストの負担を軽減するかが課題です。

課題②使用後のフローが確立されていない

バイオプラスチックは、使用後のフローにも課題があります。

例えば、複合プラスチック種では、分解できるものとできないものが混入しているケースがあり、分解されないプラスチックに関しては従来の埋め立てや焼却による処分が必要です。

さらに、通常のプラスチックと一緒に出すと、かえってリサイクルの阻害要因になることも問題です。

また、一般家庭にもバイオプラスチックのリサイクル知識が浸透しておらず、バイオマスプラスチックを普及させるためには消費者への認知も必要になるでしょう。

課題③バイオマスプラスチックは原料不足の懸念がある

バイオマスプラスチックの代表的な原料はサトウキビ、トウモロコシ、キャッサバなどです。原料には非可食部が用いられることもありますが、可食部が用いられている場合が多いです。

現状、原料が不足しているという情報はないものの、将来的な需要拡大により、食料と燃料用途の競合や、持続可能な原料の調達ができないなど、原料が不足する懸念があります。

課題④生分解性プラスチックは用途が限定される

非生分解性のバイオマスプラスチックは、通常のプラスチックと同様の品質を確保できるため、製造・使用面の課題が少ないです。

しかし、生分解性プラスチックは微生物によって分解される特性上、製造・使用が難しく、生分解性プラスチックの種類によっては長期保存に向いていないこともあるため、用途が限定的です。

カーボンニュートラル実現にはバイオプラスチックの普及が必要不可欠

2050年カーボンニュートラル実現に向けて、バイオプラスチックの普及が必要不可欠になっており、日本では2050年までに多くの化石資源由来のプラスチックをバイオプラスチックに置き換えることを目標にしています。

多くのプラスチック製品でバイオプラスチックの導入が期待されており、例えば以下のような活用方法があります。

  • ゴミ袋の場合、可燃ゴミの収集袋にはバイオマスプラスチック、堆肥化やバイオガスへの活用に用いる生ゴミ用収集袋には生分解性プラスチックを利用する
  • 農業用マルチフィルムの場合、使用後に回収・リサイクルを行うのであればバイオマスプラスチック、農地の土壌にすき込むのであれば生分解性プラスチックを利用する

また、バイオプラスチックの導入は多くの企業が目標にしており、2030年までに導入を目指すケースが多いです。なかには、すでにバイオプラスチックへの移行を行っている企業もあります※。

バイオプラスチックは今後の普及が見込まれており、年々技術が進歩しています。

※出典:環境省「バイオプラスチック導入目標集(2022年度版)」

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BIOMASS EXPO バイオマス展は、バイオマスを活用した様々な技術が出展される展示会です。バイオマスに関連する最新技術や業界の動向を知りたい方は、ぜひBIOMASS EXPO バイオマス展にご参加ください。

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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


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