ホンダの強みを活かしたFCシステム、水素で新たな事業の柱を築く…H2 & FC EXPO【春】~第23回[国際]水素・燃料電池展~ 2月19日開幕

エネルギーの活用や需給について対応・議論が加速する中、より一層注目を集める水素。その技術開発やビジネスに関する展示会「H2 & FC EXPO【春】~第23回[国際]水素・燃料電池展~」が2月19日から21日に東京ビッグサイトで開催される。

同展示会に出展するホンダは、水素事業を新たな事業の柱と位置づけ、燃料電池(FC)システムを燃料電池自動車(FCEV)だけではなく、商用車や定置電源、建設機械の4つの領域で展開することで事業成長を見込んでいる。中でも燃料電池商用車向けFCシステムは2030年にシェア5%、2040年頃にはシェア30%にまで引き上げる目標を掲げている。

その実現に向けてホンダは栃木県真岡市にあったパワートレインユニット製造部の跡地に次世代FCシステム専用工場を建設し、2027年度から稼働を開始する計画だ。

◆水素事業成長のカギは供給先との協業

本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 水素パワーユニット開発室の室長を務める遊作昇氏は「カーボンニュートラルな社会を築くには再生可能エネルギーの活用が必須だが、再生可能エネルギーは太陽が出ている時間や風が発生する量など気候条件によって変動があるので、その余剰電力をどう上手く使っていくかという点で水素が今、注目を浴びている。そこでホンダはカーボンニュートラルを実現するために水素は必要不可欠なエネルギーキャリアであると考えている」と、水素事業を新たな柱に据える意義を語る。

本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 水素パワーユニット開発室 室長の遊作 昇氏

FCシステムの活用先に関して遊作氏は「水素は素材の原料になるほか、直接燃やして熱源にしたり発電をしたり、また燃料電池で電気に変えたりと、色々な活用方法があり、我々はその中でも効率が高く水素を活用できる燃料電池にいち早く着目して研究を続けてきた。運輸部門では乗用車のCO2排出ゼロに向けたバッテリーEV(BEV)の普及が進んでいるが、トラックなどの大規模なエネルギーを使わなければいけない車両は、BEVでつくってしまうと非常に重量が重くなり、荷物が運べないなどの弊害が出てくる可能性もあるので、そうした分野については水素エネルギーが非常に適していると考えている。また非常用電源として今はディーゼル発電機が世の中にたくさん出回っているが、それらもクリーンなエネルギーとして水素が活用できるのではないかとの思いから、FCの有力な用途の一つとして考えている。さらに建設機械も重点的な活用の場として定めている」と解説する。

ホンダの水素事業はFCシステムの外販がメインになってくるだけに、事業成長には供給先との協業がカギとなるが、すでに具体的な取り組みも進んでいるという。「いすゞ自動車とは共同研究を進めていて、トラックを実際に開発し公道での実証実験を行っている。中国では東風汽車集団と一緒につくったトラックによる公道での試験が終わり、実証実験を検討しているところ。建機メーカーとも話をしている段階だが、どのようなスペックが必要なのか研究している」(遊作氏)。

いすゞとの共同研究による大型FCトラック「GIGA FUEL CELL」

◆ホンダFCシステムの強みは「耐久信頼性」と「出力密度」

また外販していく上でのホンダのFCシステムの強みに関して遊作氏は「一つは耐久信頼性。我々はFCEVで累計1億km以上のデータを収集し、それを開発にフィードバックすることで耐久性や信頼性を向上させている」と解説する。ちなみに栃木県真岡市に建設する専用工場では、2024年7月に販売を開始した新型FCEV『CR-V e:FCEV』に搭載しているものに対して、耐久性で2倍、コスト半減を目指したFCシステムを生産する計画となっている。

さらに遊作氏は「出力密度の高さ、すごくコンパクトにできているというのがもう一つの強みと思っていて、よりお客様が搭載しやすいような形、大きさを目指している。大型トラックでいうと1基だけでは出力が足りないので複数連結が必要になるが、当然、キャビンの下、エンジンが載っている場所にコンパクトに納めることが求められる。これまで乗用車のボンネットの中にシステムを搭載してきた“パッケージのノウハウ”を持っているので、コンパクトにつくるというのは我々の得意分野でもある」とも付け加えた。

遊作氏は1998年のホンダ入社後、これまで主に電動車の開発に携わり、2018年から燃料電池R&D領域の室長を担当している。電動車の開発を巡り日本の自動車メーカーは出遅れていると決まり文句のように言及されていることについて遊作氏は「ビジネスの面で日本は少し出遅れてしまったところがあるかと思っている」としながらも、「製品そのものを比較すると、電池やモーター、制御など一つひとつの技術を見れば決して負けてはいない」と指摘する。

また、「ホンダのエンジンは長年使用しても壊れない。『カブ』や発電機のエンジンが壊れなかったり、走行距離で27万km超えた『CR-V』がまだ走っていたりと、ホンダをご愛顧いただいたお客様に受け入れられている信頼性の部分は大きい。我々も電気になろうが、どのような部品を使おうが変わらずに開発しているという信念は、新興メーカーや中国メーカーに対してまだまだ戦える領域ではないか」と語る。まさにそうした信念がFCシステムの耐久性に脈々と受け継がれているというわけだ。

 

◆認知拡大で水素事業の活性化図る

その遊作氏は、東京ビッグサイトで開催される「H2 & FC EXPO【春】~第23回[国際]水素・燃料電池展~」の初日2月19日に行われる専門技術セミナーで「Hondaの燃料電池開発とカーボンニュートラル社会に向けた取り組み」をテーマに登壇する。

遊作氏は講演に際して「ホンダの燃料電池や水素関連の技術をまずは認知していただきたい」と語る。ホンダはFCEVの開発に早くから取り組み、すでに市販化もして世界をリードする存在にも関わらず「まずは認知して」とはやや意外だが、遊作氏は「一昨年のFC EXPO 水素・燃料電池展で、今のCR-V e:FCEVに搭載しているシステムのモックアップを展示した時、『ホンダさん、まだFCをやっていたんですね』という声をかなりいただいた。(2016年3月販売開始のFCEV)『クラリティ』は出したものの、すでに(2021年9月には)やめているので、認知度はまだまだなのだと展示会の現場に立っていて感じた」と明かす。

それゆえに「我々も水素や燃料電池に関する取り組みを継続しているということを幅広く認知していただきたいし、そこでホンダのシステムを使ってみたいというお客様がいれば是非、お話をしていきたい」と遊作氏は期待を寄せる。講演では「ホンダが取り組んできた水素関連技術や、今後の外販に向けた提供・サービス、POCの取り組みなどをまずはご紹介したい。いすゞ自動車や東風汽車とのトラックの共同実証の話や、FCを活用した非常用定置電源、さらにアメリカではクラス8トラック(車両重量15トン超)に燃料電池を搭載したものをつくったので、それらについて説明する。さらに、新しく2027年度から生産を始める燃料電池の紹介もしようと考えている」とのことだ。

本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 水素パワーユニット開発室 室長の遊作 昇氏とホンダ CR-V e:FCEV

ホンダ CR-V e:FCEV

アメリカン・ホンダモーターの敷地内で実証実験を行ったFC定置電源

ホンダ CR-V e:FCEV

本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所 水素パワーユニット開発室 室長の遊作 昇氏

■H2 & FC EXPO【春】~第23回[国際]水素・燃料電池展~

会期:2025年2月19日(水)~21日(金)10時~17時

会場:東京ビッグサイト

主催:RX Japan 株式会社

※1月21日現在。最新情報は展示会HPをご確認ください

制作:Response 小松哲也
元記事リンク:https://response.jp/article/2025/01/21/391068.html

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