電池のリサイクルが必要な理由は？
持続可能な開発を支える取り組みについて解説

性質や形状などによって様々な電池がありますが、電池は大きく「化学電池」と「物理電池」に分けられます。

化学電池のなかでも、特に一次電池と二次電池は様々な製品で使用されています。
 

様々な製品に使われている一次電池と二次電池ですが、明確な違いは充電の有無にあります。

一次電池は放電のみの充電できない電池で、使用するたびに電池容量が減少し、放電が完了すると繰り返し使うことができません。現在、電化製品の規格にあわせて様々な一次電池が製造・販売されています。

一方、二次電池は充電して繰り返し使用できる電池のことで、電池容量が減少しても充電すれば再度使うことが可能です。現在、主要な二次電池には、スマートフォンやノートパソコンなどの様々な製品に使用されているリチウムイオン電池があります。

一次電池と二次電池の主な種類は、以下のとおりです。

▷関連記事：二次電池とは？種類・特徴・用途や一次電池との違い、メリットを解説
 

電池をリサイクルする大まかな流れは、以下のとおりです。

1. 電池の回収と分別
   
2. 金属や化学物質の回収
   
3. 回収した物質の再利用
   
4. 再利用できない物質の適正処理

電池のリサイクルは、一次電池と二次電池の他、電池の種類によっても処理方法が異なります。

例えば、乾電池は鉄や亜鉛などの再利用が可能な物質を取り除いてリサイクルする場合もあれば、そのまま埋め立てて処理する場合もあります。

一方、二次電池には希少金属や有害物質が含まれているため、再利用できる物質は回収し、利用できない部分は適切に処理されます。

電池に使用されている金属には、人体に有害なものがあります。例えば、カドミウムは長期間人体にさらされると腎臓、肺などに障害が生じる可能性があるため、適切な処理が不可欠です。さらに、このような有害な物質が回収されず環境に放出されると、土壌や水源を汚染するリスクも伴います。

リサイクルによって適切な処理を行うことで、環境汚染や人体への影響を最小限に抑えることが可能です。

また、近年は電気自動車などの普及により、今後も二次電池の需要は拡大すると見込まれています。

国際エネルギー機関（IEA）によれば、2040年には2020年に比べてリチウムは約13倍、ニッケルやコバルトは約6倍の需要になると予想されており※、継続的に二次電池を供給するには、リサイクルによってリチウムやニッケル、コバルトなどの希少な資源を有効活用する必要があります。

このように、電池のリサイクルは環境や人体を守るだけでなく、継続的に二次電池を製造し、供給するための重要な役割も担っています。

※出典：経済産業省「蓄電池産業の現状と課題について」
 

日本を含む各国が様々なリサイクル制度を設けていますが、その多くは「拡大生産者責任」という考え方に基づいています。

拡大生産者責任とは、生産者が製品のライフサイクル全体（原材料の選択、製造工程、使用、廃棄・リサイクル）での環境負荷に対して、一定の責任を負うという考え方です。

この考えに基づき、製造業者には使用済みの電池の回収だけでなく、環境に配慮した製品開発や最終的な廃棄物の適切な処理が求められています。
 

現状、電池のリサイクル方法は種類によって異なります。例えば乾電池の場合、一般廃棄物として自治体により回収・処理されることが一般的です。

ただし、自治体によっては廃棄する際に分別を行い、リサイクルする場合もあります。そのため、消費者側が自治体のルールに従って適切に電池のリサイクルを行わなければなりません。

また、同じ一次電池でも、ボタン電池（アルカリボタン電池・酸化銀電池・空気亜鉛電池）は回収後に適切な処理が行われてリサイクルされます。
 

前述のとおり、電池のリサイクル方法は種類によって異なりますが、小型充電式電池（二次電池）に関しては、2001年に施行された「資源有効利用促進法」によって、メーカーや輸入業者などによる回収・再資源化が義務付けられています。

二次電池には、ニッケルやコバルト、カドミウムなどの希少な金属が含まれており、限られた資源を有効活用するためです。

なお、2004年には小型充電式電池のリサイクルを促進するため、小型二次電池と小型二次電池使用製品の製造業者・輸入販売事業者によって構成される「一般社団法人 JBRC」が設立されています。
 

現状、産業用蓄電池に関しては、リサイクル方法が確立されていません。そのため、利用者が自ら処理業者に委託するなどの対応が必要です。

各メーカーや関連業者は、広域認定制度に基づく処理システムを構築・運用しており、産業用蓄電池のリサイクルには、広域認定を利用したリサイクルが推奨されています。

広域認定制度とは、各メーカーや関連業者が自社製品の再生や処理の行程に関与し、効率的な再生利用を推進すると同時に、再生や処理をしやすい製品設計への反映と、廃棄物の適正な処理を行うことを目的として創設された制度です

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の第9条の9と第15条の4第3項に規定されており、環境大臣によって認定を受けます。

処理可能な主な産業用蓄電池には、開放型鉛蓄電池、密閉型鉛蓄電池、電気車用鉛蓄電池などがあります。
 

EVや定置用蓄電池の需要増加に伴い、バッテリーに利用されるリチウムイオン電池の需要は、今後も拡大すると見込まれます。持続可能な電池産業の構築には、リチウムイオン電池のリサイクル・リユースの推進による循環システムの構築が重要です。

しかし、リチウムイオン電池のリサイクルには、電池の回収・分別やリサイクルのコスト面に課題があります。リチウムイオン電池のリサイクルによる循環システムの構築には、希少金属などの資源を回収する技術開発、回収網の効率化が不可欠です。

特に中間処理・精製費用がリサイクルコストの大部分を占めており、事業者の負担が重くなるため、技術開発によってリサイクルコストの低減を図る必要があります。

現在、日本ではグリーンイノベーション基金を活用した蓄電池リサイクルの技術開発など、リチウムイオン電池のリサイクルが抱える課題の解決に向けた取り組みが行われています。
 

海外でも電池のリサイクルに関する取り組みが行われています。

アメリカでは連邦法による規制は行っていませんが、州によってリサイクルの規制を設けています。例えばカリフォルニア州では、2018年に州法 「Assembly Bill 2832」が成立しました。

Assembly Bill 2832では、州内の使用済み EV用バッテリーを可能な限り100％リサイクルまたは再利用することを目標とし、回収プログラムの実施と監視を行っています。

また、EUでは2023年にバッテリー規制が施行され、製造から廃棄までのプロセスに厳格な基準を設けています。

サプライチェーンの見える化・強靱化を通じて、EU域内での重要原材料の確保や戦略的自律を目指しており、自動車用、産業用、携帯型などのEU域内で販売される全てのバッテリーが規制の対象です。

バッテリー規制についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事：欧州電池規則の対象と内容は？施行予定のバッテリーパスポートとともに解説

再生可能エネルギーとEV（電気自動車）の普及には、二次電池自体の技術だけでなく、継続的に二次電池を供給するためのリサイクル技術も重要です。

二次電池に関連する最新の情報を知りたい方は、「BATTERY JAPAN （バッテリージャパン）二次電池展」へご来場ください。

BATTERY JAPAN二次電池展は、電池リサイクル技術や二次電池の研究開発、製造に必要なあらゆる技術、部品・材料、装置が出展する電池分野世界最大級の展示会です。

世界各国から専門家が来場し、face to faceで蓄電池ビジネスを加速させる重要なプラットフォームとして認知されています。ご来場いただくと説明を聞きながら最新の技術に触れることが可能です。

また、本展示会では、関連企業様の出展も受け付けています。ご出展いただくと、ご来場者様に自社製品を直接見てもらえるため魅力を伝えやすく、具体的な商談も進められます。業界関係者との繋がりを持てる展示会のため、ぜひ出展もご検討ください。

BATTERY JAPAN 二次電池展の詳細はこちら

近年、世界的に蓄電池の需要が増えており、特に二次電池のリサイクル意識が高まっています。

日本では、小型充電式電池のリサイクルは義務付けられていますが、産業用蓄電池のリサイクル方法は確立されていない状況です。また、リチウムイオン電池のリサイクルにも課題は多くあります。

電池のリサイクルは、環境保護や持続可能な開発を行うために必要な取り組みです。加えて、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、二次電池の分野は新しいビジネスチャンスが生まれる可能性もあるため、最新情報を入手しましょう。

多くの人や情報が集まる大規模展示会は、業界の動向や技術などの最新情報を得るチャンスのため、参加をおすすめします。

BATTERY JAPAN二次電池展は、電池分野世界最大級の展示会として認知されており、世界各国から専門家が来場します。二次電池の最新情報を知りたい方は、ぜひ本展示会にご来場ください。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
資料請求はこちら

※「BATTERY JAPAN二次電池展」は、「SMART ENERGY WEEK -スマートエネルギーWeek-」の構成展です。