EV市場の動向は?
日本と世界の普及率や取り組みを解説
EV市場の動向は?日本と世界の普及率や取り組みを解説
CO2(二酸化炭素)排出量削減につながり、環境への負荷が少ないとされる「EV(電気自動車)」が注目を集めています。カーボンニュートラルの実現に向け、世界各国でEVの普及が進められており、EV市場は拡大を続ける状況です。
本記事では、日本や世界各国のEV普及率や市場の状況を解説します。各国のEV普及目標や取り組み、技術動向も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。併せて生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。
「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他
目次
- 日本市場でのEV普及率
- 世界市場でのEV普及率
- 各国のEV普及目標と取り組み
- EVに関する技術動向
- EV市場の今後
- EVの最新技術に触れるなら「BATTERY JAPAN 二次電池展」へ
- EV市場は世界的に拡大が見込まれる分野
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日本市場でのEV普及率
一般社団法人 日本自動車販売協会連合会の調査によると、2024年11月の新車販売台数(乗用車)全体のEV比率は1.4%となっています※1。ガソリン車やHV、PHEVなどを含む登録台数とその構成比は次のとおりです。
※1出典:一般社団法人 日本自動車販売協会連合会「燃料別メーカー別登録台数(乗用車)2024年11月」
2024年11月時点では、日本市場の主要自動車はHV(ハイブリッド自動車)であり、全体の63.4%を占めています。HVとガソリン車を合計した構成比は91.6%にのぼり、市場のほとんどを占める状況です。
日本の乗用車におけるEV比率は、2024年1月から11月までの期間で1.0%~1.6%の間を推移しています。2020年の0.6%、2021年の0.9%※2と比較するとEV比率は上昇しているものの、世界の市場と比較しても低い水準です。
世界市場でのEV普及率
※1出典:経済産業省 製造産業局 商務情報政策局「自動車分野のカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等について」
国際エネルギー機関(IEA)が発表したデータでは、2023年の世界の新車販売台数(乗用車)に占めるEVの比率は18%と報告されました※2。前年のEV比率である14%と比較すると、4%上昇しています。
また、近年の世界市場でのEV比率は、2019年と比較して右肩上がりに推移しています。
特に、中国とヨーロッパのEV市場の拡大が顕著です。2024年1Q(1~2月)時点のEV比率は、中国が17%、ヨーロッパ(イギリス、ドイツ、フランスの合計)が13%と高い割合を見せています。アメリカは世界平均よりやや低い8%の状況です。
次の章からは、中国・ヨーロッパ・アメリカなど、世界の主要地域のEV普及率や市場の状況を解説します。
中国市場とEV普及率
中国市場では、2023年のEV販売台数が810万台を記録しました。世界のEV販売台数の6割弱を占める台数であり、世界でも最大規模のEV市場です。
中国国内の自動車販売台数に占めるEVの比率は、2023年は20%を超えており、EVは中国の自動車市場全体でも高い存在感を示しています。
中国は国内に有力なEV企業や電池企業が多く存在し、EV市場の拡大を支えています。近年では、タイをはじめとする海外でもEV工場の稼働が開始され、国外への進出も増加している状況です。
※1出典:国際エネルギー機関(IEA)「Global EV Outlook 2024」
※2出典:内閣官房「参考資料(自動車)」
ヨーロッパ市場とEV普及率
ヨーロッパはEV普及の先進地域であり、2023年の新車登録台数は約320万台に達しました※1。前年比で約20%増加しており、中国に次ぐ台数です。
2023年時点でEUの乗用車の新車登録全体に占めるBEV(バッテリー式電気自動車)の割合は14.6%です※2。
ただし、以前と比較すると、EUのEV販売台数は低迷傾向にあります。欧州自動車工業会(ACEA)はEV市場での競争力強化のため、乗用車などのCO2(二酸化炭素)排出基準の見直し時期の前倒しを提言しています。
※1出典:国際エネルギー機関(IEA)「Global EV Outlook 2024」
※2出典:欧州自動車工業会(ACEA)「Economic and Market Report Global and EU auto industry:Full year 2023」
アメリカ市場とEV普及率
アメリカは2023年のEV新規登録台数が140万台となり、前年比で40%以上増加しました※1。世界全体に占めるEV販売台数の割合は10%を占めており、中国やヨーロッパに次ぐ市場を形成しています。
一方、アメリカ市場でのEV比率は8%であり※2、中国やヨーロッパと比較すると低めの水準です。アメリカは自動車市場自体が他国と比較して大きく、相対的にEV比率が低い傾向を示しています。
アメリカのEV市場は、地域によってEVの普及率に差がある点が特徴です。カリフォルニア州やテキサス州、フロリダ州では大規模なEV市場が形成されつつある一方、ガソリン車の自動車産業が集積する中西部をはじめ、EV化が遅れている地域も存在します。
※1出典:国際エネルギー機関(IEA)「Global EV Outlook 2024」
※2出典:経済産業省「自動車分野のカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等について」
各国のEV普及目標と取り組み
脱炭素社会の実現に向け、各国ではEVシフトが広まっています。日本を含む主要国・地域のEV普及目標と、目標達成に向けた取り組みを解説します。
日本のEV普及目標と取り組み
日本では、乗用車の新車販売に占める電動車(EV・PHEV・FCV・HEV)の割合を、2035年までに100%とする目標を掲げています※。
日本の特徴は、多様な道筋(マルチパスウェイ)を見据えた戦略を基本とする点です。
EVだけでなく、FCV(燃料電池自動車)、PHEVやHEVなどのハイブリッド車を含めた電動化により、脱炭素社会の実現を目指しています。さらに、ガソリン以外にバイオ燃料を混合させたガソリン含む内燃機関の開発も継続して進める方針です。
また、国は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を推進するため、2兆円を超える規模のグリーンイノベーション基金を創設しました。グリーンイノベーション基金は、次世代蓄電池やモーターの開発など、EV関連事業にも活用されています。
中国のEV普及目標と取り組み
中国では、2027年までにNEV(EV・PHEV・FCV)が新車販売全体に占める割合を45%にする目標を掲げています※。NEVは中国政府がEVなどの普及のために策定した用語で、日本語では「新エネルギー車」と呼ばれています。
中国のEV市場の特徴は、国や地方政府が主体となって産業を育成してきた点です。中国政府はリーマンショックからの回復に向け、2009年頃からEV市場の育成施策を打ち出しました。
2015年には「中国製造2025」が発表され、サプライチェーン全体の構築を考慮した施策が実施されました。2020年以降はEV市場が急拡大し、現在では世界的にも高い市場シェアを有しています。
ヨーロッパのEV普及目標と取り組み
EUでは2035年以降、合成燃料を使用する車を除き、新車販売をEV・FCVで100%にする目標です※。
2020年以降、EUではEVの販売台数が増加しました。その背景には、EU各国でEV購入を支援する政策が行われたことが挙げられます。ガソリン車などの内燃機関搭載車の生産が2035年以降実質的に禁止される点も要因のひとつです。
EUに本社を置く主要自動車メーカーでは、EV化に向けた競争が激化しています。例えば、フォルクスワーゲンは多くのEVモデルの投入を発表しており、2033年以降、EU圏内ではEVのみを製造する予定です。
アメリカのEV普及目標と取り組み
アメリカは、2030年の新車販売でEV・PHEV・FCVの販売目標を50%としています※1。
アメリカではバイデン政権の下、インフラ投資雇用法(IIJA)とインフレ抑制法(IRA)などを成立させ、幅広いEV支援策を打ち出しました。EV支援策全体の金額は1,300億ドル近くに達しています※2。
アメリカの市場調査会社が消費者に実施したアンケートでは、EV購入に関して消費者の強い関心があることが示されました。
一方、アメリカのEV普及には、充電スポットの不足や高い車体価格、普及の地域差などの課題が残されています。
※1出典:経済産業省「自動車分野のカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等について」
※2出典:独立行政法人 ジェトロ(日本貿易振興機構)「連邦政府のEV普及政策、成果と課題(米国)」
EVに関する技術動向
各国のEVへの取り組みが進むとともに、EVに関する技術開発も活発化しています。EVに関する技術動向として、車載用蓄電池とモーターを取り上げて解説します。
車載用蓄電池
車載用蓄電池は、EVの主要部品製造原価の3分の1を占めるとされる部分です。EVの走行距離や重量にも深く関わっており、高性能化や低コスト化が進んでいます。
現時点では、EVの車載用蓄電池は液体リチウムイオン電池が主流です。蓄電池の電力貯蔵能力やパワーの向上を目指し、全固体リチウムイオン電池が各国で進められています。さらに脱リチウムイオンを目指し、ナトリウムイオンやフッ化物イオン、マグネシウムイオンなどを使う電池の開発も進んでいます。リチウムに比べて原料を安価に調達でき、運べる電子の量が増え、性能が向上したりする可能性もあります。
モーター
EVの動力であるモーターシステムは、モーターの他、インバーターやギア、冷却機構などで構成されています。EVの性能向上を考えると、出力向上や航続距離の延伸、小型・軽量化、コスト削減などが課題です。
各国の自動車メーカーでは、より効率的で低コストのモーター開発が進められています。例えば、テスラでは、2023年にレアアースフリーの駆動用モーター開発が発表され、車両価格を抑制したEVの提供を目指しています※。
EV市場の今後
国際エネルギー機関(IEA)によると、EV販売台数は2030年に約4,500万台、2035年には6,500万台近くに達すると予測されています※。
中国でのEV市場の急拡大、EUのCO2排出基準に関する規則の改正などを受け、EV市場は今後も成長するという意見がある一方、成長は鈍化していくとの意見も存在します。
2025年1月に誕生したアメリカのトランプ政権では、EVに関する助成金の拠出停止やECの義務化を廃止する方針を発表しました。
長期的に見るとEV市場の伸び代はあるものの、トランプ政権への移行などにより、今後の伸び率などは不明瞭です。
水素市場との関連性・展望
世界各国の普及目標には、EVとともにFCVが含まれるケースが多いです。FCVは、水素と酸素で化学反応を起こし、電気を発電して走行します。EVと同様に、走行時にCO2を排出しない自動車です。
現在、水素市場は定置用燃料電池がメインですが、FCVの導入促進により、今後さらなる
拡大が期待されています。日本での水素市場の規模は、2030年に1兆円程度、2050年に8兆円程度にのぼる予測です※1。
日経BPクリーンテック研究所によると、世界全体の水素市場の規模は、2030年に約37兆円、2050年に約160兆円に達すると想定されています※2。EV市場と同様、拡大が見込まれる今後の水素市場にも注目が必要です。
※1出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「NEDO水素エネルギー白書」
※2出典:日経BPクリーンテック研究所「全世界の水素インフラ市場規模は2050年に約160兆円」
EVの最新技術・動向に触れるなら「BATTERY JAPAN 二次電池展」へ
EVの駆動用バッテリーには、繰り返し充電が可能な二次電池が使われます。二次電池はEVの性能に大きな影響を与える部分であり、EV市場に携わる方にとって、電池への理解は重要です。
また、EV市場の最新動向を常に把握する必要があります。
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BATTERY JAPAN 二次電池展は、電池分野で世界最大級の展示会です。電池用部品や材料、リチウムイオン二次電池や全固体リチウム電池など、幅広い技術・製品が出展されます。
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BATTERY JAPAN 二次電池展の詳細は、以下のリンクよりご確認いただけます。
EV市場は世界的に拡大が見込まれる分野
EV市場は中国を中心に世界各国で拡大しており、ビジネス機会が見込まれる分野です。現時点で日本市場での普及率は低いものの、国は支援策を実施しており、多くの民間投資も見込まれています。
EVに関する技術のなかでも、車載用蓄電池はEV性能に深く関わる部分です。BATTERY JAPAN 二次電池展では、二次電池の研究・開発から製造までの技術・製品が出展されます。二次電池の最新の動向に触れたい方は、ぜひご来場ください。
また、BATTERY JAPAN 二次電池展には、二次電池メーカーや次世代自動車メーカーなどに関連する方が多く来場します。関連する技術をお持ちの企業の方は、ぜひ出展をご検討ください。
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EV市場への知見が深まる「BATTERY JAPAN 二次電池展」
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。併せて生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。
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