都市ガスのカーボンニュートラル化とは?3つの視点から手法を解説

都市ガスのカーボンニュートラル化は、2050年カーボンニュートラル実現へ向けたガス業界でのCO2(二酸化炭素)の排出量削減の取り組みです。

ガス業界では、天然ガスの高度利用やメタネーション技術の活用、カーボンニュートラルLNGをはじめ、複数の取り組みが進められています。

本記事では、ガスのカーボンニュートラル化を3つの視点から解説します。ガスのカーボンニュートラル化へ向けた国内の事例も紹介しているので、ぜひご一読ください。
 


▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


目次

  • ガスのカーボンニュートラル化とは
  • ガスのカーボンニュートラル化へ向けた取り組み事例
  • 脱炭素化技術の情報収集なら「ZERO-E THERMAL EXPO ゼロエミッション火力発電EXPO」へ
  • ガスのカーボンニュートラル化への要請は高まりを見せている

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都市ガスのカーボンニュートラル化とは

日本で2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことが宣言されて以降、都市ガスの分野でもカーボンニュートラルの実現へ向けた取り組みが進められています。

2022年2月に開始したロシアのウクライナ侵攻により、エネルギーに関する国際情勢が変化した点も、ガスのカーボンニュートラル化が求められる要因のひとつです。

都市ガスのカーボンニュートラル化に向けた方法は、大きく3つに分類されます。

  1. 燃料の転換やガスの高度利用
  2.  ガス自体の脱炭素化
  3. その他のカーボンニュートラル手法の活用

以降では、3つの視点からガスのカーボンニュートラルに貢献する手法を紹介します。

カーボンニュートラルについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:カーボンニュートラルに向けた取り組みとは?国際的な背景と企業の導入事例を紹介

1. 燃料の転換やガスの高度利用

「燃料の転換やガスの高度利用」は、天然ガスの利用拡大によって低炭素化を実現する試みです。

天然ガスは、石油や石炭と比較して環境に優しい燃料です。燃料の環境性指数の観点から見ると、CO2(二酸化炭素)、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)の排出の点で、天然ガスは石油や石炭より優位にあります。

例えば、火力発電で使用されている石炭を天然ガスに置き換えることができれば、一定のCO2排出量削減が見込めます。分散型エネルギーシステムやスマートなエネルギーシステムなどのガスの高度利用も、CO2削減に貢献する施策です。

2. ガス自体の脱炭素化

ガスのカーボンニュートラル化では、ガスの利用拡大の他、ガス自体の脱炭素化が重要です。具体的には、次の手法が挙げられます。

  • メタネーション技術の活用
  • バイオメタンの活用
  • 水素の活用

以下では、各手法の詳細を解説します。

メタネーション技術の活用

メタネーション技術とは、CO2とH2(水素)から都市ガスの主成分であるメタン(合成メタン)を生成する技術です。特に、グリーン水素などを原料とした合成メタンは「e-methane」と呼ばれています。

合成メタンは、発電所や工場で排出されたCO2を利用します。利用時にCO2を排出しますが、製造に分離・回収したCO2を利用するためCO2排出量と回収量が相殺され、CO2の排出を実質ゼロで利用可能です。

合成メタンは、既存の都市ガスのガス管を利用でき、インフラや設備にかかる導入コストを抑えられるメリットもあります。

メタネーションの製造方法には、サバティエ反応などの化学反応による方法と、生物反応によるバイオメタネーションを活用する方法が開発されています。

メタネーションについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:メタネーションとは?カーボンニュートラルとの関係やメリット、実用化の例を解説

バイオメタンの活用

バイオメタンは、生物由来のバイオガスを精製して、メタンの濃度を高めて製造するガスです。

バイオガスは、ごみや家畜排せつ物、紙ごみや下水の汚泥などのバイオマスを微生物の力でメタン発酵して製造します。原料に化石燃料を利用しない点、ごみから大気に放出される有機性のメタンを回収する点などから、温室効果ガス削減に役立ちます。

バイオメタンの活用は、技術的に確立している点がメリットです。東京ガス株式会社は三井物産株式会社と連携し、バイオメタンの国際的なサプライチェーン構築を目指しています※。

※出典:東京ガス株式会社「カーボンニュートラル社会実現に向けた海外産バイオメタンの輸入」

水素の活用

水素は燃焼時にCO2を排出せず、複数のエネルギー源から製造できます。天然ガスに代えて水素を活用できれば、温室効果ガスの削減につながります。ガスのカーボンニュートラル化実現に有効なエネルギーとして、期待が寄せられている燃料です。

天然ガスから水素への転換例には、火力発電や産業用工業炉・バーナーの燃料が挙げられます。

水素の活用には、製造から供給、保安までのサプライチェーンの構築が必要です。ガス業界では、水素の製造や水素導管の導入、消費機器開発や保安面などを中心に、検討が進められています。

3. その他のカーボンニュートラル手法の活用

ガスのカーボンニュートラル実現のためには、天然ガスを利用しつつ、CO2排出を抑制する試みが大切です。天然ガスの代替燃料に関する研究・開発が進められているものの、すぐに天然ガスの利用を廃止できるわけではないためです。

具体的には、次の手法が検討されています。

  • CCSやCCUSなどを用いたカーボンリサイクル
  • カーボンニュートラルLNG

各手法の詳しい内容を紹介します。

CCSやCCUSなどを用いたカーボンリサイクル

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、排出ガスからCO2を分離・回収して地下の安定した層に貯留する技術です。CCSにCO2の有効利用(Utilization)の考え方を加えたものは、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)と呼ばれています。

ガスを利用する場所にCO2を分離・回収する設備を設置すると、ガス利用に伴うCO2排出を削減可能です。例えば、東京ガス株式会社では、ガス利用先で排出されたCO2を回収し、有効活用するサービスの実用化に向けた取り組みを進めています※。

CCSやCCUS以外のカーボンリサイクルでは、DAC(Direct Air Capture)の技術開発が進められています。DACは大気から直接CO2を回収する技術であり、将来のe-methaneの価格低減に貢献する技術です。

CCSやCCUS、DACについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:CCS・CCUSとは?違いやCO2排出量削減に向けた国内外の取り組みを紹介
▶関連記事:DAC(直接空気回収技術)が注目される理由は?仕組みやメリット、抱える課題を解説

※出典:一般社団法人日本ガス協会「カーボンニュートラルチャレンジ2050 アクションプラン」

カーボンニュートラルLNG

カーボンニュートラルLNGとは、LNG(液化天然ガス)の利用を通じて発生する温室効果ガスを、カーボンクレジットで相殺して提供されるLNGです。

天然ガスは環境負荷が少ないエネルギーですが、生産や輸送、利用を通じて少なからずCO2が発生します。

カーボンニュートラルLNGは、どうしても削減できないCO2排出量を、新興国などの環境保全プロジェクトで削減されたカーボンクレジットと相殺(カーボンオフセット)しようとする試みです。

カーボンニュートラルLNGは、CO2を削減したい多くの企業のニーズがあります。近年では、Jクレジットや京都メカニズムクレジットなどの国連・政府が運営する制度の他、ボランタリークレジットのような民間が運営する制度も運用されています。

ガスのカーボンニュートラル化へ向けた取り組み事例

ガスのカーボンニュートラル化は、国内の複数の団体・企業で取り組まれています。以下では、3つの団体・企業を例に、カーボンニュートラル化に向けた取り組みを紹介します。
 

一般社団法人日本ガス協会

一般社団法人日本ガス協会は、国内の都市ガス事業者による業界団体です。一般社団法人日本ガス協会では、2020年11月に「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を公表し、その後2021年6月にアクションプランを策定しました※。

一般社団法人日本ガス協会では、2030年のガスのカーボンニュートラル化率5%以上の実現のため、メタネーションの実用化などに取り組んでいます。その他、2050年のガスのカーボンニュートラル化へ向け、実行計画や具体的な取り組みを示しています。

※出典:一般社団法人日本ガス協会「GO!ガステナブル」

東京ガス株式会社

東京ガス株式会社は、ガスのカーボンニュートラル実現のため、CO2のネットゼロ(温室効果ガスの排出量を正味でゼロにする意味)に取り組んでいます※。

2030年までのトランジション期に検討している天然ガスへの燃料転換、カーボンニュートラルLNG(CNL)、高効率機器やスマートエネルギーの導入はその一例です。

2050年のCO2ネットゼロに向けた期間では、e-methaneや水素、バイオ由来エネルギーの開発を推進しており、将来的なガスのカーボンニュートラル化を目指しています。

※出典:東京ガス株式会社「2050年脱炭素社会への挑戦」

大阪ガス株式会社

大阪ガス株式会社は「カーボンニュートラルビジョン」を発表し、2050年カーボンニュートラル実現に向けたロードマップを示しています※。

大阪ガス株式会社はメタネーション技術の蓄積や再生可能エネルギー開発などの強みを活かし、2030年度のCO2排出削減貢献1000万トン、再生可能エネルギー普及貢献500万kWなどの目標を掲げています。

※出典:大阪ガス株式会社「カーボンニュートラルに向けた挑戦」

ガスの脱炭素化技術の情報収集なら「ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPO」「CCUS  WORLD」へ

2050年カーボンニュートラルを実現するために、国内でも多様な企業がガスのカーボンニュートラル化に取り組んでいます。

実際に自社でガスのカーボンニュートラル化を検討する場合や、ガスのカーボンニュートラル化に関する技術などを展開する場合には、最新の情報を集めて知見を深めることが求められます。

脱炭素化技術の情報を得たいと考えているなら、ぜひ「ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPO」へご来場ください。

ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPOは、発電システム、プラント設備から保守・運用技術、水素・アンモニア活用まであらゆる製品・技術が出展し、ガスだけでなく火力発電の脱炭素化に関する最新の知見や情報の収集が行える展示会です。ガス会社や電力会社の開発者をはじめ、発電事業者やプラントメーカーなどの専門家が全国から参加します。

また、24年10月開催のスマートエネルギーWeek【秋】の特別展示エリアでは、ガスのカーボンニュートラルに貢献するCO2の分離・回収、有効利用や貯蔵に関する多様な製品・サービスが展示される「CCUS WORLD」も開催されます。

展示会の会場では、説明を聞きながら最新の技術に触れることができ、具体的な商談や見積依頼も可能です。事前に来場登録をすれば無料で参加可能で、自社が抱える課題解決のヒントが得られたり、パートナー企業の獲得に繋がったりする可能性があります。

なお、関連する技術をお持ちであれば、各展示会への出展もご検討ください。関連する研究者や開発者が多数来場する当展示会は、自社の製品やサービスのアピールにも適しています。

来場、出展ともにメリットのある展示会のため、ぜひ参加してはいかがでしょうか。各展示会の詳細は、以下のリンクをご確認ください。

■ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPO
詳細はこちら

■CCUS WORLD
詳細はこちら

ガスのカーボンニュートラル化への要請は高まりを見せている

気候変動に対する世界的な潮流のなか、ガス業界でもカーボンニュートラル化が進められています。石油や石炭を天然ガスに転換する方法、メタネーションやバイオメタンを活用する方法など、その手法は多彩です。

ガスは生活に密接したエネルギー源であり、なくてはならないインフラのひとつです。各手法の実現にはまだまだ課題が残されており、今後さらなる技術の研究・開発が求められています。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
資料請求はこちら

※「ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPO」は、「スマートエネルギーWeek(SMART ENERGY WEEK)」の構成展です。
※「CCUS WORLD」は、「スマートエネルギーWeek【秋】(SMART ENERGY WEEK)」の特別展示エリアです。

合成燃料は実用化へ向けた研究・実証が進んでいる

合成燃料は、CO2やH2を合成して製造する環境負荷の小さい燃料です。既存の設備を活用できる、高いエネルギー密度を誇るなど複数のメリットがあります。

一方、現時点では製造コストの高さや技術に課題が残ります。今後の実用化へ向けて研究・実証が進んでおり、技術開発の加速や国内プロジェクトの組成などが求められる分野です。

CCUS WORLDでは、合成燃料に関する最新技術や製品が展示されます。来場する方・出展する方の双方にメリットの多い展示会ですので、ぜひCCUS WORLDの活用をご検討ください。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
資料請求はこちら

※「CCUS WORLD」は、「スマートエネルギーWeek(SMART ENERGY WEEK)」の特別展示エリアです。

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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


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